秋になって、畑の収穫もまっさかり。ほどほどな広さの畑には野菜が実った。かぼちゃだけはなぜかものすごい量で、三箇所の畑にどっさりできた。この時期修学旅行の受け入れもあったので、高校生の手も借りてコンテナに詰めたカボチャと大根をせっせと地下の榁に運んだ。結構な力仕事が続いた。森に落ちている枝拾いもせっせとやった。猫車を押して枝を拾って集めては山にして、持ち上がらないくらい大きいのはノコギリで切って運んだ。大きな山を作って、燃やす。雨の日は、コテージのセンターハウスの棚に長年溜まっていたものなんかを片付けたりした。(もうこの時期にはパソコンでやる仕事なんて、何もなかった。そんな時間は全く取れなかったが、写真の整理だけは少しあった。)
この頃には、悩まされていた足のしびれも森の中を一日中歩いていたせいかずいぶん楽になってきていた。今考えると毎日アーシング(グランディング)だったのかもしれない。枝ひろいをして、大きな枝の山を燃やす焚き火。これが唯一の楽しみで、焚き火をやる日は本当に1日頑張って枝を拾った。焚き火といっても小さなものじゃなく、キャンプファイヤーをもっと大きくしたようなデッカい火。面白いのでファイヤースターターなんかも試してみたりした。白樺の皮とアルミのファイヤースターターの組み合わせで結構うまく着火できるようになった。コテージ横のバーベキューハウスに予約が入ると炭火起こしなんかも請け負った。小金井公園でパンロゴクラブ の仲間とバーベキューをよくやっていたので炭の火起こしはお手の物だ。変なところで変なスキルが役に立つものだ。
合間に森の中で山ぶどうを収穫してジャムを作ったりしたのも美味かった。
収穫した大根、べにくるりという赤い大根は切り干し大根の製作を始めた。とってもとっても大量にあった。毎日収穫、一輪車で運んで、水洗い、切って干す。秋も深まる頃は、それがメインの日課になった。
もう、こういう作業だけになっていた。日報のようなものを作っていたが、毎日、「畑作業」「切干し製作」ほとんどがそれで埋まった。最初に言われていた研修などは全くなく、一度だけ食品衛生セミナーのようなものに参加しただけだった。東京で介護食の会社にいた時に取った調理師免許、役立つことはほとんどなかった。一度だけ修学旅行生のためにもらったカレイの刺身を大量に下ろしたことだけだ。ここに来る前は、十勝の食材のレシピづくり、まちおこしイベントの企画、なんて話もあったんだが… 。敷地内に小さなレストランがあったが、バーベキューの火起こしくらいでどんなに忙しくても呼ばれることはなかった。十勝の食材の活用メニューを考えるなんて全くなかった。でも、不思議と辞めてしまおうとは思わなかった。あと半年足らず、任期は無事に終えようと思っていた。
生活はというと、大樹町の町営住宅は家賃も安くとても暮らしやすく、美味いものもいっぱいなので、すっかりこの街を気に入っていたので、このままこの街にくらす方法など模索していた。好きな時に休みを取れるわけでもなかったが、移住者向けのイベントなどにはせっせと参加して、パンロゴクラブも地元の祭り参加や、デジタルアート展なんかもやって結構充実していたが、どうも最初の構想とはだいぶ違ってきた。冬までこの件をまとめたら総括してみようと思っている。
そして、いよいよ冬が近づいてきた。